体が疲れやすい、疲れが取れない、眠い
多くの方が、疲れや体力による不調の原因を「年齢によるもの」として諦めている印象です。
疲れの原因には大きく分けると「肉体的なもの」「精神的なもの」「神経的なもの」の3つに分類され、これらは互いに影響し合っています。また、疲れやすい状態が続く場合は、病気の可能性もあります。
疲れを放置していると、悪化や慢性化により疲れが取れにくくなることや、強い疲れになると日々の生活に影響を与え、気分の落ち込みや生活への支障をきたし、新たな病気への引き金になることも考えられます。
長期間続く場合や強い倦怠感がある場合は、医療機関の受診をおすすめします。
ここからは、3つの疲れの原因について説明します。
肉体的なもの
同じ場所の筋肉が使われ続け、長く緊張した状態が続くと、疲労物質である「乳酸」が蓄積します。
乳酸の蓄積は、疲労感やだるさといった症状を招きます。
また、日頃から適度な運動により筋肉に刺激を与えていなければ、筋肉は萎縮し衰えていきます。
そのような場合、少しの運動であっても疲れを感じるようになります。
加えて、エネルギー不足の状態で筋肉を動かすことで肉体的疲労につながることもあります。
精神的なもの
家庭内での悩みや人間関係の悩みなどによるストレスが原因となり、精神的な疲れが生じます。
年齢に関係なく存在します。
そのため、子供が疲労感やだるさを感じている場合には、精神的な疲れが原因になっていないかを疑ってみる必要があります。
神経的なもの
頭や思考の疲れのことで、脳や視神経を酷使し緊張した状態が長時間続くことで生じます。
例えば、仕事や勉強など大量に入ってくる情報を処理するデスクワークなどが原因になります。
脳の疲れをとるには、日々の質の良い睡眠が一番有効です。
体内サイクルが乱れるため、休日の寝だめや長時間の昼寝などは避けましょう。
疲れやすい場合に考えられる病気
糖尿病・低血糖
糖尿病では、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌の低下や、インスリンの作用不足が生じることで高血糖状態が続きます。
高血糖状態が続くと、疲れやすさやのどの渇き、体重減少などの症状が出現します。
低血糖では反対に、体(特に脳)のエネルギー源であるブドウ糖が低下することで、体の疲れやすさ、ふらつき、冷汗などがみられます。
甲状腺機能低下症
甲状腺で産生・分泌される甲状腺ホルモンは、全身の代謝を活発にします。
甲状腺機能低下症では、この甲状腺ホルモンが低下することで、疲れやすさや食欲の低下、便秘などさまざまな症状が出現します。
低血圧
血圧が低いことにより、全身への血液の循環が悪くなります。
脳への血流が低下するとめまいやふらつき、頭痛や倦怠感などの症状が出現します。
原因には生まれつきのものや睡眠不足、筋肉量の不足などが考えられます。
貧血
血液中には、全身に酸素を運搬する「ヘモグロビン」が存在します。
貧血では、このヘモグロビンの血中濃度が低下するため、全身で酸素が不足してしまいます。
症状には、疲れやすさや立ちくらみ、めまい、ふらつきなどがあります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍による出血によるものや悪性腫瘍、血液疾患の可能性も考えられます。
女性の場合は月経が原因になることもあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時に無呼吸状態や呼吸が弱まることを繰り返します。
そのため、睡眠の質の低下や朝すっきり目覚められない、疲れが残っているといった症状や、日中も強い眠気に襲われることがあります。
疲れやすい人の特徴・原因は?
疲れ(疲労)の原因は、働き過ぎたり、運動し過ぎたりして、体力を消耗するからだけではありません。
日常生活には、疲れやすくなる様々な原因が潜んでいます。
誰でも、できれば疲れを溜めずに、毎日元気に過ごしたいと思うはず。
そのためには、疲れやすくなる原因を知り、対処することが大切です。
今回は、慢性的に疲れやすくなる人の特徴や原因、対処方法について解説します。
運動不足
運動不足により代謝が下がると血流の悪化を招き、疲労物質を排出しにくくなる原因になります。
そのため、運動による体力の消耗が原因で疲れることもありますが、運動をしないことでも疲れにつながってしまうのです。
特に、デスクワークなどで同じ姿勢で過ごす時間が長い場合、血液の流れが悪化する傾向があり、慢性的な疲労を感じやすいとされています。
その他にも、運動不足により筋力が低下するため、普段の歩行や姿勢維持などにも体力をより消耗し疲れやすくなることやホルモンバランスなどが乱れることで精神的な疲れを感じやすくなります。
運動は、「疲れにくい体」を作るだけでなく、生活習慣病の予防にも重要です。
ウォーキングなどの有酸素運動を取り入れて、適度な運動を続けましょう。
睡眠の質の低下
睡眠不足といった量の問題だけでなく、質が低下することで、本来睡眠で得られるはずの回復効果が不十分になり、体と脳の休息が十分にできなくなります。
睡眠の質を低下させないために、以下のような生活習慣に意識を向けて過ごしてみましょう。
生活リズムを整える | 体内時計を調節するため、起床後は朝日を浴びて朝食を食べる |
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食事時間 | 食べ物の消化には3時間程度かかるとされているので、就寝の3時間前には食事を終える |
入浴習慣 | 湯船に浸かって体を温める 遅くても就寝する1~2時間前には済ませる |
カフェイン | 夕方以降の摂取を控える |
ブルーライト | 就寝前1時間はスマートフォンやパソコンの使用を控えるかブルーライトをカットするような製品を使用する |
食生活によるもの
食生活が乱れて1日の活動に必要なビタミン類やミネラルなどの栄養素が不足すると、疲れやすくなります。
また、朝食には体内時計をリセットする役割もあり、朝食を食べないことで栄養の不足だけでなく、体内リズムの乱れを引き起こします。
体内リズムの乱れは、自律神経の乱れにもつながるため、疲れの原因にもなります。
また、胃腸への負担も疲れの原因の1つです。
早食いや寝る前の食事、よく噛まないで食べると消化不良をおこし、胃腸への負担につながります。
加えて、炭水化物や糖質の多量摂取にも注意が必要です。
これらを1度に摂取すると、何もしないと血糖値の急激な上昇を招きます。
そこで、急激な上昇を防ぐために糖質をエネルギーに変換するホルモンである「インスリン」が多量に分泌されます。
すると、インスリンによって血糖値が急激に低下します。
このように血糖値が、急上昇から急降下し低血糖状態になると、強い疲労感を感じる原因になります。
疲れを招かないように、食生活にも気をつけましょう。
ストレス
ストレスも疲れの原因になります。
ストレスによって自律神経が刺激されると、脳が緊張状態に陥り疲労を引き起こします。
ストレスを抱える要因にはさまざまな要因がありますが、定期的に発散できるような方法を見つけておくことが大切です。
姿勢によるもの
姿勢が悪いと、一部の筋肉へ極端に負担をかけることになるため、疲れやすさの原因になるとされています。
特に、活動量が少ない方やデスクワーク中心で同じ姿勢が続きやすい方は筋肉の凝りによる疲労を感じやすくなります。
また、下記のような方は姿勢の歪みを生じやすいため注意が必要です。
- 頻繁に足を組んで座る方
- 頻繁に横座りをする方
- 片足に重心をかけて立つ癖がある方
- カバンなどを長時間片側の肩だけにかける、もしくは片側の手だけで持つ方
- 頻繁に頬杖をつく方
- 猫背の方
姿勢の歪みが生じると肩こりや腰痛の原因になり、慢性化すると疲れやすくなったり、疲れが取れにくくなったりします。
まずは、いつも行っている行動や姿勢を見直し、姿勢を改善しましょう。
疲れやすい時の検査
疲れやすい状態が続く場合は病気が隠れている場合があります。
当院では丁寧に問診を行い、必要な検査を行います。
超音波検査
甲状腺疾患の可能性を調べるため、甲状腺の形状、大きさ、結節、腫れなどの異常が無いかを確認します。
血液検査
貧血や糖尿病や低血糖の状態を調べたり、甲状腺ホルモンや抗体の検査により、甲状腺機能低下や甲状腺疾患を確認します。
肝機能検査
肝臓の状態を評価し、肝機能障害が疲れの原因となっているかを確認します。
電解質検査
ナトリウム、カリウム、クレアチニンなどの電解質のバランスを調べ、疲れに影響する可能性を確認します。
感染症の検査
感染症が原因であるかどうかを評価します。
心電図
心臓の異常を検出し、心臓が疲れに関係しているかを確認します。
疲れやすい体を改善する方法
まず生活習慣の見直しを行ってみましょう。
以下でどのような生活習慣を見直せば良いかを説明していますので、ぜひ取り入れてみてください。
それでも症状が改善しない場合や体の疲れにくさ以外にも気になる症状がある場合は医療機関での相談も検討してください。
食事
偏りなくバランスの良い食事を摂ることが大切です。
また、エネルギー代謝に関わるクエン酸や体内のエネルギー代謝の過程で必要となるビタミンB1、脂質の代謝に必要となるビタミンB2などを意識して摂るようにしましょう。
また、朝食は生活のリズムを整えたり、体温を上昇させたりととても重要です。
朝食を抜くと長時間食事を摂らないことになるため、栄養不足になる可能性もあります。
1日3食を心がけましょう。
その他の生活習慣
心臓の異常を検出し、心臓が疲れに関係しているかを確認します。
生活習慣 | 概要 |
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睡眠 | 睡眠は、体や脳を休めるために重要な役割を果たしています。 適切な睡眠時間を確保できるように、日々の生活を調整していきましょう。 また、睡眠の長さだけでなく、質も大切です。 寝室の照明や寝具を適切なものにする、寝る前にスマートフォンを使用しない、夜ふかしや朝寝坊で体内リズムを崩さないなどで、睡眠の質も上げていきましょう。 |
入浴 | 入浴は、体を温めることで全身の筋肉の緊張がほぐされることや血流やリンパの流れが良くなり、体内の老廃物が流されることで、疲労回復の効果が期待できます。 長風呂や高温のお湯は、逆に体を疲労させるため、少しぬるめのお湯でゆっくり浸かるとよいでしょう。 |
運動 | 軽い運動には、血流を促し、筋肉に溜まった乳酸を排出させやすくし、疲労回復効果があります。 また、運動は「セロトニン」の分泌を促進し、自律神経のバランスを整えることでストレスを解消できます。 |
疲れやすい状態が続く場合は当院までご相談ください
十分に休息をとっても疲れが取れない場合は、病気が原因の場合もあります。
当院では総合内科専門医、肝臓学会専門医、消化器学会専門医である院長が、丁寧な問診と検査を行い、正確な診断・適切な治療をご提案いたします。
疲労感が続く場合は、一度当院までご相談ください。